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DULL-COLORED POP 第23回本公演『丘の上、ねむのき産婦人科』感想

DULL-COLORED POP 第23回本公演『丘の上、ねむのき産婦人科

【キャスト】
東谷英人、内田倭史(劇団スポーツ)、大内彩加、倉橋愛実、塚越健一、宮地洸成(マチルダアパルトマン)(以上DULL-COLORED POP)、
岸田研二、木下祐子、冨永さくら、湯舟すぴか、李そじん、渡邊りょう

【スタッフ】
脚本監修:北村紗衣 医療監修:稲田美紀(医師)

美術:土岐研一 照明:松本大介 音響:清水麻理子 衣裳:及川千春 
舞台監督:竹井祐樹(StageDoctor Co.Ltd.)配信映像監督:松澤延拓、神之門隆広
照明操作:和田東史子 舞台監督助手:澤田万里子 

宣伝美術:平崎絵理  制作助手:佐野七海、柿木初美(東京公演)、竹内桃子(大阪公演) 制作:小野塚 央

助成:芸術文化振興基金 協力:城崎国際アートセンター(豊岡市) 主催:合同会社 DULL-COLORED POP

(以上、HPから)

完全にはわかりあえない。だけど相手のことを知りたい、わかりたい、わからなくても話し合いたい、伝えたいと思いあえることがどんなに尊いか。
様々なエピソードがあったけれど、自分が過去に考えたり、今知りたいと思っていた問いに対する答えのうちの一つを教えてもらえた気がした。


性が違うから、普遍的にみて、男女の妊娠出産への向き合い方には違いがある。違わざるを得ない。
男性側はイライラするほど無神経に感じられ(タバコとか、寿司食べようとか、検診結果を気にしてなかったりとか、子どもがいない前提で旅行を組み立てるとか)るところも多かったが、わからないから説明しないといけない、しかし妊娠してから妊婦が冷静に1から説明する責任を負わねばならないのか?と。わからなくても調べようとするくらいはできるだろうというのは1場「ハイライト」でもでてきた。(態度だけの問題かと言われたら多分そうではないのだが…)
それはそれとして、3場「自由」の女性の夫に対する態度はひどく感じた。歩み寄ろうとしたのを振り払う。「あなたにはわからない」。しかしこのカップルの最後のシーンが一番泣けてしまった。うまく言葉にできないけど。話しかけて、ってはじめて夫を必要とした言葉だったから?これは4場「ロンドン・コーリング」の最後も同じように感じたけど。最終的にどうしてああいった言葉が出たのか、それは妊娠してみないとわからないかもしれない。
そして5場「スプレッドシート」。検査で可能性がなくなればすっきりする、それで終わり。でも検査結果に問題がなければ「振り出しに戻る」。どちらが本人たちにとってしあわせだろうか。通常、検査というものは結果良好なら喜ばしいはずなのに、悩みの種がそのままになっただけになった。最終的にはかなり重い、性虐待を背景に感じさせる展開だったけれど、スプレッドシートで話し合うというこの話はかなり身近に感じた。結婚前にここまで突き詰めて考える?と思う人もいるだろうけど、とても合理的だしそうするのが正解のカップルもいるだろうと思う。ここまで細かくなくてもある程度すり合わせるのはどのカップルにも必要だろうし。ここでは「子ども」は1つの項目であって、メインのようでメインじゃないのかもしれない。
6場「ペーパームーン」は平和なようで一番ちくちく来た。「子供がいて、迷惑?」と言わせてしまうのって…。でもこの言葉によって夫側が気づけたならいいのか。仕方ないのか。こういう光景って何度も見たことがある気がしていて既視感。女性側が気を使っているというか、場を収めようとしているいうか。
印象的だったのは7場「ライブ」。なぜ子どもがほしいのか?これに対する問いについて私はとても興味があるし、この世に存在する親全てに聞いて回りたいくらい。でもはっきり答えられる人は少ないだろうし、それそもそも明白な理由で子どもを作ろうということをきめて実際に作ったカップルがどれくらいいるだろう?つらそうにしていてくれると楽というのすごく共感できた。

全編通して、作中では男性側が折れる、というか、最終的には女性に寄り添うように見えることが多く、それは見ていて心に安寧をもたらした。
しかし現実はどうか?というと、そうなるケースのほうが少ないんじゃないかと思う。なんとなく。意図的にそういった脚本にしたのか気になった。

一応作品の中では、望まない妊娠というのはなくて、それを踏まえると、どんなに妊娠中や出産後のことを憂いたり悩んだりしても、一応相手がいてお互いがパートナーとして認めあっているというか、必要としているから、私達(観客や他人)が見ていないところでもふたりの時間が積み重なってちゃんと信頼なり関係を築けていると思って見られるところがよかった。(そうでなかったらただの虐待や人権侵害と思われる言動があったし、現実世界ではそのようなことも少なくなく起こっていることだと私は認識しているので。)
個のふたり、というか、1つのカップル(という表現で合ってる?)の間には2人にしかわからないこと・知らないことがあって、というかほとんどで、だから、2人が本心でそれでよいと思っていればまあ、それでよいのだ。他人に口を出す権利はない。これが異なる「生」と言えるのではないかと持った。

Aを見た後Bパターンも見た。ひとこと、違和感しかない。どうしても女性キャストは女性に見えるし、男性キャストは男性に見える。Aをみたから余計に?それはそう、なのだが。
スカートをはいているから女性なのか?はいたら女性になれるのか? 違うな、と。
これは演じた人・この作品を稽古の段階で見てきた人にしかわからない「わかり」があるんじゃないかと思う。自分が今と異なる性だったら?という考えというか。
それについては、両パターン観ての特典の内容がすごく良くて、絶対2パターン観てもらって読んだ方がいい…。正直Bを実際に観てというより、その文章からすごく新しいことを教えてもらえたというか。非売品なので中身のこと書くことはしませんが。

配信も買う予定。